大学生の食育レポート

[アドバイザー]
東京農業大学 応用生物科学部
栄養科学科 保健栄養学研究室
日田 安寿美

Vol.30 教育実習を終えて

東京農業大学 応用生物科学部栄養科学科 家鍋萌子

 私は、子どもの頃からの食育が、将来の生活習慣病やその他の疾病の予防につながると考えています。さらに、食農教育と組み合わせることで、好き嫌いのなく、食べ物を大切にすることができる子どもに育てることができるのではないかと考えています。これらが実践できる場の一つとして、学校があり、栄養士や栄養教諭が教職員の方と一緒になって食育を進めています。

 私は、教育現場に興味があり、教職課程を履修しました。そして、4年生になって5月に教育実習を経験しました。教職課程を履修したときから、この教育実習が楽しみでした。学校現場ではどのような食育がおこなわれているのだろうか、食育に対し児童はどのように成長していっているのか、児童と栄養士の関わり方はどうなっているのだろう、食農教育のやり方はどのようなやり方なのだろう、と疑問や興味が絶えませんでした。

朝食について  私が実習をさせていただいた学校は、校内に田んぼや畑があり、食農教育をするための環境が整っていました。担任の先生方も児童と一緒に農作業をされている方が多いので、食に対する理解や食に関する教育への理解も、高く協力的な方が多いと感じました。

 学校現場に食育が義務づけられてから、そんなに時がたっていないので、栄養士は学校の先生方の理解を得て協力してもらうまでになるには相当努力が必要だという話をきいたことがあったので、ここまで学校全体が食農教育に熱心なことに驚きました。

 児童も、自分たちで食べ物を作っているので、食物への興味もあり、給食もまったく残さないという、素晴らしい児童達でした。食べ物は作ることが難しいから、残したらもったいないし、残したら作ってくれた人が悲しむということを、児童は自然と学び取っている結果なのだろうなと思いました。近年、学校現場での給食の残食率が多くなっているにも関わらず、児童が畑や田んぼで農業を体験すると残食率が大きく下がっていました。やはり、食農教育は必要だと思いました。食べ物の大切さを机上の授業で教えるだけでは効果は薄いと思います。児童が実践できるくらいに、授業内容を落とし込むには、やはり実体験をさせるというやり方が一番効果的なのではないかと学びました。

 教育実習中に他の先生方の授業を見学させていただきました。また、研究授業を2回と給食の時間のお話を2回やらせていただきました。その中で学んだことは、児童への話し方や見せ方、授業への入り込ませ方、授業のリズムの作り方です。自分が小学生だった頃の様子を覚えていなかったので、どういう言葉で話せばいいのかわからない部分がありました。しかし、毎日の実習の中で児童とたくさん関わり話していったことや、ほかの先生方の児童とのかかわり方や授業の仕方を観察していく中で、徐々に児童への話し方を学んでいくことができました。また、授業の導入の発問の仕方やタイミング、児童の発言の拾い方なども実際に授業をやりながら体得していくことができました。授業がリズムよく、活発に進行するにはどうしたらいいのか、実習前から考えていました。授業の練習をすることも大切ですが、児童の名前を覚え、名前で児童を呼んであげるということも同じくらい大切だと学びました。発問に対し、児童は手を挙げて発表しようとしてくれます。その時に、「はい、○○さん、どうぞ。」と名前で呼んであげるだけで、その児童の顔が輝いたように見えました。そして、次の発問に対しても同じようにまた発言しようとしてくれていることに気づきました。そして、名前を覚えていると私自身もこの子はこんなことを考えてくれたのだなと確認しやすいですし、何より、授業にテンポが生まれ、とてもリズムよく授業をすることができました。児童の名前を覚えるということは短い教育実習の中ではなかなか大変なことだと思いますが、これができるか否かで研究授業だけでなく、教育実習そのものがより豊かなものになると学びました。

 クラスの全員と交流するということは、とても難しいと感じました。教育実習が短いからという理由だけではありません。児童の中には積極的に話しかけてくれる児童もいれば、なかなか話かけられない児童もいます。後者のような児童には、こちらから積極的に話しかけて、どういう子なのかなとその子を知っていく努力が必要です。児童を理解して、かつクラスとしての特徴も理解していくことが、より良い授業につながっていくのだろうと思いました。

 給食の時間の指導では、マナーやお皿の置き方に注意して指導をしていきました。指導すると児童は素直に聞いてくれて、位置を直してくれました。給食の話ということで、小学校3年生に牛乳が牛乳パックになるまでと牛乳はチーズなどの加工品にもなるのだということを5分程度で話しました。牛乳の話は私が大学の部活で酪農実習をした時の写真を使い、牧場での牛の様子や牛乳を搾っていくところなど実際の様子をみせたので、児童も興味深く話を聞いてくれました。3年生なので、加工品はわからないものもあるかなと予想していましたが、ほとんどの加工品を言うことができていました。国語の授業で大豆の加工品について扱う単元があるので、それに結びつくようなお話ができたのではないかなと思いました。栄養教諭は他の科目とうまく関連させて授業を展開することも大切なので、とてもやりがいもありますが、難しいとも思いました。短い間に話をするときは媒体の工夫がとても大切だと思いました。

 近年の児童は、食環境が整っているためか、良くも悪くも様々な問題を抱えています。嗜好品を容易に買える環境で育った子どもたちは、砂糖のたくさん入っている清涼飲料水を選び、脂質の多いスナック菓子を選びます。これらの嗜好品が悪いというわけではなく、嗜好品がどのような食品か知った上で選択してほしいのです。食育で嗜好品を扱う機会があれば、嗜好品が体にとってどのような食品なのか理解できるので、過剰摂取をする子が減るのではないでしょうか。今の児童の健康を守るには、こういった「食品に関して学び親しむ環境」を整えることだと考えます。児童のころからの食育が、正しい食習慣を生み、生活習慣病を防ぎ、生涯の健康維持、増進につながると信じています。

 また私は、自分の健康を守るだけの食の知識だけではなく、生産者や調理従事者など食事を作ってくれた人に感謝し、食物の命をいただいて生きていることを理解し、食物の命にも感謝できる子にもなってほしいと考えています。近年、茶たくを知らない、お茶はペットボトルしか知らない、食物がどのようにできるのかを知らないという子が増えています。食に関する知識が入ってきにくい環境を生きています。そのような環境を生きる児童達に、ぜひ食農教育をして、食物のでき方についての知識を得る機会を与え、食物を作ってくれる農家さんや、食物を運んだり、調理してくれる人がいる、だから毎日ごはんが食べられるのだな、と自然に考えられる子どもに育ってほしいと思います。学校現場では、食に関する指導をどうしていくか試行錯誤の段階で、食育活動を進めることが難しい学校もまだまだあると思います。しかし、食に関する知識が乏しくなってしまう環境を生きる児童にとって、食育・食農教育はとても重要だと考えます。今後、栄養士・栄養教諭はもっと活躍の場を広げ、多くの教職員の方に理解と協力を求め、食育活動を広めていって欲しいと思います。教育実習を終え、実際に現場で働く栄養教諭の方とお会いできて、とても刺激されました。今後、私も食育分野で活躍できる管理栄養士になりたいと強く思いました。