幼児向け紙芝居を実施して

東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 管理栄養士専攻3年
鈴木 真里奈


アドバイザー:東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 保健栄養学研究室 日田 安寿美


私たちは、10月11・12日に行われた東京都食育フェアに参加し、子ども向けに食育紙芝居とクイズを行いました。紙芝居は授業の一環で作ったもので、対象は3歳児を設定していました。3歳児は偏食が多くなる時期ではないかと私たちは考え、「好き嫌いなくバランスよく食べよう」をテーマに、紙芝居を作成しました。バランスよく食べるには主食、主菜、副菜が揃った食事にすることが大切ですが、これでは子どもには難しくて伝わりません。そこで3歳児に理解してもらえるように主食は黄色の食べ物、主菜は赤色の食べ物、副菜は緑色の食べ物とし、桃太郎を参考に物語を考えました。

紙芝居

紙芝居のあらすじ : 主人公の健太郎くんが住む健康村。ある日のこと、病気島の鬼に襲われ、みんなが病気になってしまいました。そこで健太郎くんは鬼を倒すために旅にでます。病気島までの途中で赤村、黄色村、緑村に立ち寄り、さかなくん、お米ちゃん、ピーマンくんが仲間になり、病気島に到着しました。しかし一人一人で立ち向かっても鬼に敵いません。そこで全員の力を合わせて鬼に立ち向かったところ、鬼の顔がやさしくなってきました。実は鬼も病気になっていたのです。その後、健康村のみんなも鬼も元気になり、みんな仲良く暮らしましたとさ。 ]

リーフレット

親子

3つの村の食べ物がどんな働きをしているのかと共に、赤村では「肉だけでなく魚も食べよう」、黄色村では「ご飯はお米が変身したもの」、緑村ではピーマンは苦くて苦手な子が多いと思ったので、「ピーマンも仲間に入れてあげよう」という内容を盛り込みました。紙芝居の後で、赤村、黄色村、緑村の食べものが理解できたかどうか復習するために、クイズを出しました。「ぶたさん、食パンくん、ブロッコリーさんは何色の村に住んでいるかな?」子供たちはみんな元気に手をあげてくれました。次に、作業しながら学ぶことをとり入れたいと考え、この3つの食べ物のシールと、3つの村の役割と主な食べ物のイラストを書いたリーフレットを作成し、クイズの答え合わせをしながら子どもたちにシールを貼ってもらうことにしました。リーフレットの裏面には保護者の方向けにレシピを載せ、お土産として持ち帰っていただけるようにしました。

当日は紙芝居の開始前にチラシ配りを行いましたが、15分ほどで会場内の子ども連れの方におおかた配り終えてしまいました。そのためどのくらい人数が集まるか全員心配していました。「せっかく準備や練習をしてきたのだからせめて一人でもいいから集まってほしい」と願うばかりでした。しかし心配とは裏腹に、紙芝居開始5分前ぐらいになると、子どもたちがぞくぞくと集まってきてくれました。中には私たちのテント前を通りがかった際に、保護者の方がお子さんに「紙芝居あるって、みていく?」と聞いて見ていって下さる方もいました。

始まる前はにぎやかに話していた子どもたちも、紙芝居が始まると食い入るように見てくれました。セリフが変わるたびにそのセリフを言っている人のほうにパッと向き、紙芝居が新しい場面になればそちらをじっと見ていました。実際に子どもを前にして行うという経験が無かったため、皆始めは緊張していて表情もやや硬かったように思います。しかしやっていくうちに少しずつ肩の力が抜け、私たちも楽しみながらできるぐらいに余裕が出てきました。

クイズになるとみんな元気に手を挙げて答えてくれました。3歳児を対象に設定した内容でしたが、当日は1歳くらいの子から小学生の子までいました。クイズの内容が小学生のお兄さん、お姉さんにとっては少々簡単だったようです。小学生の子はクイズを出すと「わかった」、「学校で習ったよ」と言っていました。他に小さい子もいたので「答えはまだ言わないでね」と言って小さい子の反応も見てから正解を発表するようにしていました。しかし、中にはやんちゃな子もいて、答えが分かったとたんに大きな声で「あか!」と言ってしまい、私たちは思わず苦笑い・・・。このように不意なことも起こりましたが、これも実際に子どもたちに接してみてこそのハプニングだなと感じました。子どもたちは常に笑顔で、こちらまで自然と笑顔になっていました。

元気な子供たち

リーフレットへのシール貼りは子どもによってできる早さが異なるので、全員が張り終えたか確認することと、小さい子には少し手助けをするよう配慮しました。私たちだけでなく、小学生の子が隣の小さい子の手助けをしてあげることもあり、微笑ましい光景でした。来てくれた子どもたちに好き嫌いを聞くと「無いよ」と言う子が多かったです。また小学生のほとんどの子が、今回扱った内容を「学校で習った」ということを覚えていました。子どもたちはご両親と共に食育フェアに来ており、「このような催しに足を運ぶ親御さんはもしかすると食に対する意識が高く、その影響で子どもたちも意識が高いのかな」と思いました。

今回の参加で得たこととして、普段の大学生活では接する機会のない子どもたちの前で実際に食育活動を実施してみることができ、子供たちの反応を肌で感じることができたことが一番大きかったと思います。2日間で計4回行い、1回平均20~30人の子が来てくれました。予想よりもたくさんの子が来てくれてとても嬉しかったです。学外実習等で全員が揃わず、準備や練習等を進めるのが難しいこともたくさんありましたが、最後までやり遂げることができ、貴重な経験となりました。

会場の様子

 私は、食育とは「体験」と「考える」ことの両方が合わさって成り立つものだと考えます。体験は遠くの畑に頻繁に行くという様な負担の大きいものではなく、スーパーに買い物に行く、料理を作ってみる等、日常生活や学校の教育活動の中で行えるもので十分だと思います。それを体験するだけにせず、そこから何か子ども達が「考える」ことが大切だと思います。例えば私が小学校の時に芋掘りがありましたが、農家の方が育てて下さったものを、育つ課程や農家の方の作業等をまったく学習せずにただ掘るだけでした。さらに掘った芋は家庭に持って帰って食べるようにという事しか言われず、調理法やさつま芋がどのような食べ物かも学んでいません。これではただ「楽しかった」、「おいしかった」という感想しか生まれず、子ども達にとって印象の薄い出来事になってしまいます。私達は子ども達に「体験」を提供し、そこから「考える」きっかけ作りをすることが大切ではないかと思います。

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