中野区の健康づくりのイベントに参加して

東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科  柴田  梓


アドバイザー:東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 保健栄養学研究室 日田 安寿美


先日、私は中野区で行われた健康づくりのイベントに初めて参加してきました。短い時間ではありましたが、大学の中だけでは学ぶことのできないことをたくさん得ることができたと思います。今回、このイベントに参加して、各自治体が地域住民の方たちのために、どんな活動をしているのか、垣間見ることができました。この機に、みなさんにもご紹介したいと思います。


このイベントでは、私たちの大学だけでなくいくつかの団体が「食と健康」をテーマに様々な出し物をしていました。私たちは、保健所の管理栄養士の方と一緒に“目覚ましふりかけ”という出し物をやらせていただきました。これは、来場者の方に実際にふりかけを作ってもらうと同時に、朝ごはんについて考えてもらう、という体験型のものです。
この“目覚ましふりかけ”は、材料をすり鉢でするだけで簡単にできます。実際に作ってもらった後、一部は試食をして、あとはお土産に持ち帰っていただくようにしていました。体験型の出し物だったので、特に高齢者や小さなお子さんは興味津々で集まって来てくださり、多くの方にふりかけを作ってもらうことが出来ました。


“目覚ましふりかけ”の発案者は大学の先輩の新山さん,鈴木さん,高城さん,青木さんだそうで,コンセプトは,


  • 日本茶が入っているので、朝食で食べてスッキリ目を覚ましてもらう
  • 火を使わず(子どもでも簡単に)作れる
  • 調理器具としてのすり鉢を、子どもにも体験してもらう
  • すり鉢ですることで食品の香りを体験できる
  • 旨味(かつお節、こぶ茶)、香り(ごま、刻みのり)、カルシウム(桜えび)、食物繊維(ひじき)、たんぱく質(きな粉)と栄養素のバランスも考えた
  • 農大の日本茶をPRする

ということでした。このふりかけは評判がよく,それ以来,毎年受け継がれています。


イラスト1イベントの当日、どんな人たちが来場してくれるのか、どんなふうに接すればよいのかと、私はとても緊張していましたが、実際に来てくれた方たちと話し始めると、そんな不安や緊張は一気に吹き飛んでしまいました。



来場者は高齢者が多く、壮年期のご夫婦、小さな子供連れのお母さん方が主に足を運んでくださり、いろいろな話をしました。こんなに一度に初対面の人たちと話すのは初めてだったのですが、どの方もみなさん親しげに私たちと話をしてくださり、コミュニケーションをとることができました。食についてのブースだったためか、自然と来場者自身の食生活の話を多く聞くことができ、普段の様子を覗うことができました。


ここで驚いたのは、健康志向の強さです。そして、驚くほど詳しいところまでよくご存知でした。特に多くの高齢者の方が、ご自身の健康のことをよく考えていました。


  • 「私はね、○○を毎日食べてるんです。」
  • 「○○って身体にいいっていうじゃない?だからちゃんと食べてるのよ。」
  • 「朝は食べすぎちゃうから、昼は○○しか食べないの。そうやって調節しているの。」

・・・などなど。
いろいろなところから入る情報をもとに、健康のために工夫しているようでした。しかし、それらの情報は本当に合っているのでしょうか。どこまで本当なのでしょうか。


健康に関する情報が溢れる中で、多くの人がその情報を正しいと信じ込んでしまう傾向にあると思います。また、極端に食べ過ぎたり、逆にまったく食べなくなってしまったりする人もいるのではないでしょうか。正しい情報を提供することは、食育にとって重要な一面だと思います。正しい知識を持って、それを実行してこそ、意味があると思うのです。みなさんは、どう思われますか。


着ぐるみ私がこのイベントに参加して良かったと思ったことは、来てくれた方々とのふれあいがとても楽しかったことです。来場者の方は、それぞれ楽しそうにイベントに参加してくれました。興味を持って取り組んでくださり、いろいろな話をして、「家でもやってみるわね」という声を多くいただくことが出来ました。満足そうにしていただけて、とても嬉しく思いました。このようなイベントに来て楽しいと思ってもらうことが重要ですが、そのためのコミュニケーション力の重要性を学ぶことが出来ました。「食育」と言っても、堅苦しいものではなく、来てくださった多くの方に、小さなことでも何か働きかけができることに、このようなイベントの意味があるのではないか、と思いました。


私たちは、ほかの参加団体のブースを見たり、参加してみたりしました。豆を箸で運ぶゲームや、その場で大豆から豆乳を作り、できたてを試飲できたり、味噌の素晴らしさということで味噌汁を試食させてくれたり、それぞれ工夫がされていて面白かったです。体力測定やウォーキング体験などもありました。
これらのブースに共通しているのは、ほとんどが体験型だということです。体験することが、見たり聞いたりするだけよりも、来場者の心に残るのではないでしょうか。このイベントを行うにあたって、どうしたら多くの人が足を運んでくれるか、来てくれた人に満足してもらえるか、といった行政のアイディアや努力をうかがうことができました。


イラスト2人の食生活を変えることは簡単ではありません。けれども、変えるための働きかけはできると思います。住民の方たちにとって、1番身近な存在が地域の存在なのではないでしょうか。地域活動では、食について考える良い機会をつくることが大切だと私は思います。そして、食の楽しみ方、さらには健康であることの素晴らしさを伝えることができたら素敵だと思います。



今回のイベントを通して、多くの方に満足して帰っていただけたと思いますが、少しでも食に興味をもってもらえたら、今回私たちがやったことに意味が生まれると思います。興味を持ってもらう、そのきっかけ作りが食育の出発点になるのではないか、と私は思います。


さて、みなさんは、ご自身が住む街でどのような活動が実施されているかご存じですか?秋は各地域で健康フェアが開催されるようです。ぜひ、みなさんも参加してみてくださいね。




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