食を育むもの

東京農業大学大学院 農学系研究科 食品栄養学専攻  青木  麻理恵


アドバイザー:東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 保健栄養学研究室 日田 安寿美


大学進学のために東京へ出てきて数年・・・。地元を離れてはじめてわかったことはとても多く、都会での多忙な日々から本当に色んなことを教わりました。今回は私なりに感じたいろいろな場面での「食のはぐくみ」についてお話ししてみようと思います。


私の食の中核にあるのは、なんといっても地元の高知の存在です。海・山・川をはじめ、自然に囲まれた高知は、ファッション雑誌を飾るようなおしゃれな服や物は、充実しているとはいえません。でもそんなものはなくても、環境・人・食べ物が普遍的な魅力を放っているのです。


高知の海高知は海の幸も山の幸も豊富です。黒潮が海流で、海の色は濃紺。空の青さと海の青とのコントラストが最高にキレイです。写真は龍馬像がある桂浜から中岡慎太郎像がある室戸までの道で撮影しました。


高知では、宴会や飲み会のことを「おきゃく」といい、またそこでは「皿鉢(さわち)料理」がふるまわれます。皿鉢は1枚の大きなお皿にあらゆる料理を盛り、各自好きな物を好きなだけ取るという仕組みになっています。普通は刺身・寿司・その他の3通りがセットで、「その他」の部分には焼き物・揚げ物・フルーツやデザートまで盛りつけられる、といった形態をとります。


皿鉢料理皿鉢(さわち)で記念撮影
駅前にあった観光用の看板。お正月の皿鉢はこんな感じです。豪快な高知人はお酒も大好き。おちょこには、穴があいていて、その穴をふさぎながらお酒を飲むので机に杯を置くことができないんです。傍らには闘犬で有名な土佐犬がいます。


「おきゃく」の中心には皿鉢料理があり、そこには笑顔があふれるのです。そんな皿鉢料理の良さを発信するため、私は農大で開催されたクッキングサミットという創作料理コンテストに「土佐まるごと❤プレート」を出品しました。この作品は、私が地元高知で慣れ親しんできた料理と、大学で知った新しい食材との出会いから生まれたものでした。


「土佐まるごと❤プレート」
高知でとれたプリップリ新鮮なカツオ。高知の日差しの光を思いっきりあびて育ったトマトやみょうが、そしてナス。四万十川の青のり(生のりは目を見開くぐらいおいしいんですよ)。どれも高知の特産品です。

  • <主食> 発芽玄米入りご飯・雑穀入り黒米ご飯 (高知・仁井田米使用)

  • <主菜> かつお香味ステーキ

  • <副菜1>土佐風2色かきあげ~四万十の香り揚げ・ころころ高知野菜かき揚げ~

  • <副菜2>おからサラダ~カムカム果汁の香り~

  • <副菜3>土佐なすの味噌チーズ焼き

  • <副菜4>お豆腐・大根と冥加のお味噌汁


東京では本当にさまざまな食イベントや施設、食情報があふれています。アースディマーケット、食EXPO,チーズフェスタ、マクロビ料理教室、ごはんミュージアム、ご当地物産展、アンテナショップ・・・時には友人と畑にいって農作業を手伝ったり。これは私が参加したり印象に残ったもののひとかけらですが、私の食の中核にあった「高知」での食。それが東京でより多様な食品や食文化にふれることで、私の中の新しい「食」が育っていったのだと思います。「食」を育むものは私にとっては、私が生きてきて刺激を受けた全てのものや環境や人、全てを指すのです。最近は高知でも、帰るたびに「地産地消」の4文字をよく見かけます。私の知る限り、昔から地産地消が自然と根付いていた高知でさえこの文字を見かける機会が多くなったのは、食産業を立て直し、食生活をクローズアップすることが今さらながら国レベルでも重要視されているからなのでしょう。食は誰かに強要されるものでも、咎められるものでもないと私は思っています。でもそれはそれぞれの環境で一人一人に「食」の中核となるものが育っている場合に言えることだとも思います。


ご当地キャラクターくろしおくん高知県のご当地キャラ”くろしおくん”です。高知発祥のよさこい鳴子おどりの格好をしています。夏が一番盛り上がる季節。皆さんも一度遊びに来てみてください。


私は高知と東京の両方で、それを養うことができました。「食」が持つ役割には栄養補給だけでなく、こころの揺れ動きにも作用する大切なものだということを忘れてはいけません。私には「こころと食事」の中でも「食」というものの脆さだったり、強さだったり、本当に色んな事を感じる機会が多くありました。これから出会うだろう人それぞれの「食」の育みを、私なりにサポートしてあげられたらどんなに素晴らしいだろうと思います。私が高知からもらったように、私も誰かの「食」を育むお手伝いをしたいと思います。それが少しでもその人の「食」の育みにつながることを期待しています。