食品添加物ってなに?
~楽しみながら学んでみよう~

東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科   4年 中村 昌司

アドバイザー:東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 保健栄養学研究室 日田 安寿美


みなさん、こんにちは!私たちは、東京農業大学第117回収穫祭(いわゆる学園祭)で栄養科学科文化学術展(以下、文展)の企画・運営を実施しました。"食品添加物"をテーマとし、前年11月より1年間、私、中村昌司(当時、栄養科学科3年生)を主導に、展示会の準備を着々と進めていきました。またこの間に、第2回東京都食育フェアにも出展し、近隣にお住まいの方々とも触れ合うことができました。この機に、私達の活動内容や食に対する思いをお伝えできればと思います。


展示会部門第2位受賞

展示会部門(参加約40団体)にて第2位(学長賞)をいただきました!


なぜ食品添加物?!

今回、私達は食品添加物をテーマとしました。 "食品偽装"、"農薬"、"無添加食品"、"ダイエット"といった情報にも興味を持っていましたが、これらは、TV、新聞、インターネットなど多くのメディアにより話題として取り上げられ、数多く発信されております。これらの情報は毎日と言ってよいほど頻繁に目にすることができ、知りたいと思えばいつでも簡単に知ることができます。したがって、私たちはメディアによって膨大に発信されている話題をここで改めて取り上げたり展示したりする必要性はないと感じました。そこで、マスメディアがあまり大きく扱っていない内容で、なおかつ、来場者の方に食や健康について考える機会をより多く提供できるテーマにしたいと考え、3ヶ月間、メンバー同士で幾度も議論を重ねました。その結果、テーマを"食品添加物"に決定しました。

着ぐるみでクイズ

着ぐるみを着て、食添クイズをやっている様子です。子どもたちに大人気でした。

数ある食に関する話題のなかで"食品添加物"をテーマにした理由は3つあります。1つ目は、"食品添加物"についての正しい情報を伝えたかったから、2つ目は、食品添加物を通して食や健康に興味関心を抱いてもらい、食を見つめ直す機会に身を置いてもらうことで、日々の食行動について考えてもらいたかったから、3つ目は、私たち自身が食品添加物の使用実態や食品製造現場の方々の声を聞きたかったからです。このテーマに触れて頂くことにより、来場者の方々に楽しく学んで頂くことを目指し、展示会の企画を進めました。まず、26人のメンバーを活動内容ごとに「運営班」「企業班」「料理班」「実験班」の4つの班に振り分けました。収穫祭まで、「運営班」「企業班」は展示の企画・準備・運営を中心に、「料理班」「実験班」は体験コーナーの企画・準備・運営を中心に行いました。


運営班、企業班、料理班、実験班とは?
運営班

この班は、主に収穫祭当日の準備や運営、来場者の方々に配布するパンフレットの作成、食品添加物に関するホームページ(HP)「たべてん」の作成を行いましたHP(詳しくはhttp://foodplus117.web.fc2.com/top.htmをご覧下さい) 。パンフレットは、会場でご覧頂いた内容や自宅でも体験できる内容などを盛り込み、来場者の方々の食生活に役立ててもらうための情報を記載しました。

※HP「たべてん」とは、文展の活動と"食品添加物"について、皆さんに知って頂くためのサイトです。HP「たべてん」では、各班の活動内容の紹介や食品添加物についての説明を記載し、会場で展示したパネル等の公開も行っていますので、是非ご覧ください。


会場の様子1とホームページ画像


企業班

この班は、主に各企業の食品添加物に対する考え方や加工食品に含有されている食品添加物の用途などを電話及びメールで伺いました。また、展示の準備として企業から聞いたことや私たちの食生活と密接な関わりのある食品添加物の有用性や用途などを調べ、この結果を基に展示媒体を作成しました。例えば、豆腐を作るために必要な「豆腐用凝固剤」や、名前だけでは用途が分かり難い「pH調整剤」などの食品添加物についてです。また、展示媒体は実際に"添加物を使用した食品"と"使用していない食品"を並べて食品添加物の有用性を示し、食品添加物が実際に使用されている食品をいくつか展示しました。また、クイズ形式で食品添加物についての解説も行いました。


会場の様子2


料理班

この班は、当初、料理を実際につくることを検討していましたが、諸事情により実施が難しかったため、少し視点を変え、市販されている食品の原材料中にどんな食品添加物が含まれているかを調べ、その食品添加物により食品にどのような効果が生じるのかを調べました。調べていくうちに、家庭で手作りができるもの、五感を使い印象深く効果を実感できるものは何かを考え、当日の体験コーナーの企画として「香りの比較」を提案しました。来場者の方々には"市販されている香料入りのいちごチョコレート"と"手作りの香料無添加のいちごチョコレート"を食べ比べることで、香りの比較をしてもらいました。


会場の様子3


実験班

この班は、豆腐作りと人工イクラ作りの体験コーナーを行いました。来場者の方々に豆腐の作り方を紹介してみたところ、「こんなに簡単につくれるなら家でも作ってみよう」という声を数多くいただきました。一方、人工イクラ作りでは、人工イクラが昆布や豆腐の成分からできていることをお話したところ、「あれ!?それって普段食べているものじゃない!?」と身近に感じて頂くことができました。どちらの体験も、家族連れの方々に大人気でした。


会場の様子4


私たちは活動を進めていく中で、食品添加物に賛成する人と反対する人とで極端に分かれていることに気づきました。私たちも始めのうちは、賛成か反対のどちらかに分かれて展示を行おうと考えましたが、正しい食品添加物の情報を分かり易く、かつ、楽しく伝えることを目指す以上は、賛成や反対に分かれてはいけないと考えました。


私たちの食品添加物に対する考え方

食品添加物と聞いて皆さんは何を想像しますか?加工食品を作る過程で必要なものとして膨張剤や増粘安定剤等がパンやジャムに使われています。これらは食品を膨らませたり、食感やとろみを調整したりして、おいしさを向上させるために必要とされています。その一方で、「食品添加物は安全なのだろうか」という問い掛けは、本当に難しい問題です。私たちも、絶対に安全とは言い切れないというのが本音です。では、私たち消費者は一体どうしていったら良いのでしょうか。


資料の画像


許可されている添加物は100%安全か?!

近年インターネットや書籍で「子供が食品添加物を食べるとキレやすくなる」、「赤色○○号などタール系色素には化学構造上、すべて発がん性や催奇性の疑いがある」等の情報が発信されています。しかし、人に有害であると実証する科学的証拠があるのでしょうか?ラットやマウスの実験で発ガン性や催奇性が生じたからと言って、人に同様な症状が発症する恐れがあると言い切れるのでしょうか?私たちは疑問に思います。


現時点で使用許可が降りている食品添加物は、様々な動物実験を行い、無毒性量(有害な影響が見られない最大の量)を決め、1日摂取許容量(人が毎日一生涯摂取し続けても安全な量)を算出していますし、十歳に添加される量はごくわずかであることがほとんどです。かといって、加工食品に含まれている食品添加物は100%安全だと言い切ることができるのでしょうか?食品添加物の食べ合わせによって、人に害がないものだとはっきりと言うことができるのでしょうか?


現在も食品添加物の安全性に関する試験は行われています。食品添加物は100%安全だと言うことはできませんし、逆に、人に害をもたらすものであると決めつけることもできないと思います。


添加物と現代社会

今の社会、食品添加物があることで社会や経済が回っている側面はあると思います。例えば、流通のために日持ちさせることや、即席でおいしいものが食べられることも食品添加物のおかげではないでしょうか。それ故、単純に食品添加物を無くすという考え方は現実的ではないと思います。現代において、食品添加物は一種の「食文化」であり、この「食文化」を認め、食品添加物と折り合いをつけ、上手に共存していくことが大事なのではないかと考えています。


消費者としての向き合うこと

添加物という食文化に対して、ただ危険性ばかりを唱えて、否定するばかりでは無責任です。それでは何も変わりません。最近、リスクコミュニケーションという考え方が出てきました。これは食品に100%の安全ばかり求めるのではなく、消費者も食品のもつリスクを知った上で利用していこう、そのための情報交換を生産者・加工業者や政府と一緒にして共に考えていこう、というシステムです。食品添加物の使用が普遍化している現代の食文化ついて消費者が自ら考え、向き合うことは消費者の「権利」でもあり、むしろ「義務」と言えるのではないでしょうか。


今できること

ライフスタイルは人それぞれであり、価値観も違います。例えば、即席で食べられることがうれしい人もいますし、そうでなくても良い人もいます。このように、自分の「ライフスタイル」や「価値観」というフィルターを通して、自分にとってこの添加物は必要なのか、不必要なのかなど、表示を見て考えることが大切です。そして、あふれる情報に踊らされることなく、正しい知識をもって客観的に「自ら判断」し、これだと思ったものを「自ら選択」することが、消費者として今できることだと思います。


感想の木

私たちの活動に対する来場者の方々の意見を聞くために、「感想の木」というものを作り、展示教室に置きました。来場者が、葉っぱに見立てた紙に感想を書き、その紙の葉っぱを、木を描いた模造紙に貼りつけていくものです。


会場の様子5


来場者の方々の感想を一部紹介させて頂きます。



”大変参考になりました。添加物の危険性についても表示して頂けると、必要なのか必要でないのか、さらに深く考えられる機会になったのではないかと思います。”


”とても参考になりました。すべてを"悪"ととらえず、ライフスタイルに合わせてうまく付き合っていく。そこには消費者の目と生産者の良識が必要不可欠と痛感しました。”


”食品の中には色々な添加物が入っていることが分かりました。それらを"悪いもの"ととらえず"共存"とする考え方!自分で考えた事がなかったけど、とても良い考え方だと思います。すばらしいですね!”



皆様に対する思い

私たちはこの1年間の活動の中で、ずっと思ってきたことがあります。それは、「来場者の方々の視点に立って、わかりやすく楽しい展示や体験を行い、心から満足してもらおう」ということです。主催する側にとって、お客様のことを考えて活動をすることは当たり前のことです。しかし、私たちはその当たり前のことを常に意識し、実践することが大切なのではないか、と思っています。「私たちの展示によって、来場者の方々に食や健康について考えて頂く」、「来場者の方々の心からの笑顔を見る」、これら2つの願いを実現させるために、この1年間の活動を行ってきました。そして、最後にこの願いを実現できたことは、大変幸せに思います。しかし、食品会社の方々、先生方や先輩方のご支援・ご協力がなければこの2つの願いを実現させることはできませんでした。この場をお借りしまして、厚く御礼申し上げます。


受賞後の様子



*来月は、文展のメンバーへのインタビュー記事を掲載予定です。

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