食品添加物の展示を実施後の私たちの思い

東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科   4年 中村 昌司
野中 美寿々
常田 美樹
三好 絢子

アドバイザー:東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 保健栄養学研究室 日田 安寿美


こんにちは。中村です。今回は、先月ご紹介した収穫祭・栄養科学科文化学術展(以下、文展)について、一緒に活動してきた中心メンバーに、活動を通じての感想や食に対する思いを聞きました。大学生の生の声をお聞きください。


インタビューメンバー紹介

中村昌司(マーシー)・・・本記事のインタビュアーです。文展の代表を務め、「食や健康に興味関心を抱いてもらうことで、それらに対する考えを見直してもらい、食行動をより良い方向へ変えてもらいたい!」という思いを持ち続け、25人の文展メンバーをまとめました。

野中美々寿(みっちゃん)・・・文展の運営班のリーダーです。食品添加物に関するホームページ「たべてん」の作成、展示会で配布するパンフレットの作成と印刷を精力的に行いました。文展の活動やメンバーに対する思いがとても強い人です。

常田美樹(みきてぃ)・・・文展の料理班のムードメーカーです。体験コーナーとして“香料の添加・無添加別イチゴチョコレート食べ比べコーナー”の企画と運営を行いました。食に対する思いが、人一倍強い人です。

三好絢子(あやこ)・・・文展の企業班の中心人物です。食品添加物の有用性や使用例などの展示物を作るために、食品メーカーに問い合わせたり、文献の調査を行ったりしました。実は、アンチ食品添加物派です。

メンバー紹介


中村:さて、まず今回文展に参加したきっかけを教えてください。


野中:今しかできないことだと思ったからです。利益を求めない環境で、時間をかけて食についてじっくり調べることのできる環境に惹かれました。栄養科学科に所属して、食を学ぶ機会は多いのですが、なかなか深いところまで学べないと思っていました。しかしこの文展への参加を通して、授業で教わる以上の詳しい情報を調べ、知識を深めることができるのではないかと思い、参加することを決意しました。


常田:私は、今までに食について考える機会が多々あったけど、文展で何かを表現してみたいと思ったからです。でも、他のサークルにも所属していて、時間のことなど考えずに非常に軽い気持ちで入ったと思います。あやこ(三好)はどんなきっかけだったの?


三好:マーシー(中村)にこの文展の話を聞いた時に、インスピレーションで「面白そう!」と感じからだよ。


中村:当日来場者の方々はどんな反応でしたか?


常田:私は、来場者の方の質問に答えられないことがありました。「香料の成分は、どんなモノで作られているの?」と聞かれて、私が「実際に果物などに入っている香り成分と同じモノを作っています。安全面でも色々な試験を通ってから、食品添加物として使われています」と答えたら、来場者の方は「結局、それは何で作られているの!?」と聞かれて,こう答えました。「たぶん化学的に作られているので、石油とかだと思います。」そうしたら、「やっぱりそうじゃない、化学製品じゃない!」と言われました。太刀打ちできませんでした(汗)。後で、先輩にこのことを伝えたら、「だって、化学製品で作られている風邪薬だって飲むことがあるじゃない!?」と言われました(笑)。


野中:確かに、香料を抽出する時に良く使われるのは、有機溶媒のエタノールやメタノールだから、印象が悪くなるし、それは仕方がないよね。


常田:そうそう。消費者の方が、エタノールとかメタノールとかって聞くと、「やっぱり化学物質から作られているのね」って言われて、印象は悪いよね。


三好:でも、その人の気持ち、わからなくもないな。私の親も、風邪薬などに化学物質が使われていることは重々承知していて、「必要な時は摂るけど、必要に迫られない時は摂らなくても良いな」と言う人が多いと思う。


常田:そうだね。今回やってみて、人に正しい情報をわかりやすく伝える時は、経験を重ね、知識を蓄えておかないといけないことを自覚しました。来場者の方々から、たくさん勉強させてもらったね。


野中:うん、来場者の方々から勉強させてもらったことは、ほんとに沢山あったよね。みきてぃ(常田)のところは、料理班で香料添加・無添加別にイチゴチョコレートを実際に来場者の方々に食べ比べてもらったわけだけれど、来場者の方の反応ってどんな感じだったの?


常田:とても良かったよ。香料添加・無添加別にイチゴチョコレートの食べ比べをしてもらって、「香料が入っていると、こんなに味が違うんだ!」とか「やっぱり香料があった方がおいしいわね」という感想が多々あったよ。ある来場者の方からは、「香料に嫌悪感を覚えていたけど、このイチゴチョコレートの試食でイメージが変わったよ」と言って頂けて、その時はほんとに嬉しかった。しかも、チョコレート完売したしね。


野中:売ってないんじゃない?(笑)


常田:あ、そうか、売ってないか! ところで、あやこ(三好)はどうだった?


三好:企業班は、ブースを設けて食品添加物のクイズをしたけど、ブースに来たお客様があまり突っ込んだ質問をしてくることはなかったよ。「そうなんだ!」とか「へー、面白いね!」と言ってくれる人が大半だったよ。


会場内の様子1


野中:来場者の方々と関わって、印象に残ったことってある?


三好:若い人達は、食べ物に対して否定もしないし肯定もしないしで、ただ目の前にある食べ物を無意識に食べている感じがしたよ。「この中には、何が入っているんだろう?」と、疑問に思うことをあまりしないように感じたよ。


常田&野中:確かに、確かに。


三好:あとは、年配の方とお話して、世代によって考え方が全然違うことを感じたよ。


野中:そうだね。子供を持つと考え方が変わるのかな?主婦の方々って、食品添加物をすごく意識するよね。


三好:みっちゃん(野中)が感じた来場者の方の反応は、どんな感じだった?


野中:私は、ほとんどの時間をパンフレットの印刷に費やして、会場にあまり居ることができなくて、来場者の方々とあまり関わることができなかったな。でも、たまに教室までパンフレットを届けに来た時に、来場者の方々とメンバーの顔の両方を見ていたんだけど、来場者の方々が展示や体験に引き込まれている感じがとても伝わってきたよ。来場者の方から「食を考えるきっかけになった」「楽しかった!」「すごかったよ」という声を聞いて、食品添加物に対する意識を、少しでも変えるきっかけになれたかな、と実感したよ。


会場内の様子2


中村:文展を経験したことで、みんな自身に何か変化はありましたか?


野中:私は、食品添加物を調べれば調べるほど、食について何も知らない自分に気がついたよ。今まで大学で勉強してきたわけだけれど、大学の授業を受けるだけでは知識が全然足りないことがわかったよ。


常田:私は、「食品添加物に限らず、食の知識を私の周りのより多くの人達に伝えたい」と思うようになったよ。人々が食の知識に触れた時の様子をみていて、「なんて楽しそうなんだろう」と思ったよ。


三好:私は、伝え方の大切さを実感したよ。食品添加物の情報を興味深く伝えるために、クイズ形式を取り入れ、来場者の方々に主体的に関わってもらえるように工夫したら、来場者の方々の反応はすごく良かったよ。同じ内容でも、伝え方によって伝わる程度が随分違うということを実感したよ。


中村:最後に一言どうぞ。


常田:私は文展のテーマに掲げた“食品添加物と共存する考え方”を、自分自身の心の中にも、ずっと持ち続けたいと思っています。あやこ(三好)も言っていたけど、「食品添加物は善」とか「食品添加物は悪」というように白黒はつけたくないし、つけられないのではないかと思います。また、食品添加物に関する本やインターネットの情報が多数出ていますが、人々はそれらに振り回されている気がします。


野中:私は、身近な人に対して食について考えるきっかけを提供したいと思いました。食べることについて、もっとみんなに考えて欲しいと思うんです。


三好:私は最初にお話した通り、食品添加物に対して良いイメージは持っていませんでした。展示会が終わった今でも、食品添加物に対するイメージにあまり変化はなかったけれど、食品添加物の知識はだいぶ増えました。豆腐などの加工食品は食品添加物がないと作ることができないことも知ることができました。だから、「食品添加物は良い」とか「食品添加物は悪い」とかというように、白黒つけるのではなく、今まで得た知識を基にそれぞれの食品の取捨選択をしていこうと思います。


会場内の様子3


最後に

中村です。大学生の声、いかがだったでしょうか。今回、私たちは食品添加物の展示会を実施して、来場者の方々が体験コーナーで楽しそうにはしゃいだり、展示パネルを真剣に読んでいる姿を見ることができて心から嬉しかったです。また、「より多くの方に食品添加物を楽しみながら理解していただきたい」という目標の達成を実感できたとともに、来場者の方々に食を見直す機会を提供することができたのではないかと思っています。また、食品添加物の展示会を通して、親と子の会話のきっかけを作ったり、日頃の食生活を振り返るきっかけを作ることができたと実感できました。しかし、今回は数日間の展示会でしかなく、あくまでもきっかけを作ったに過ぎません。食品添加物に限らず、今後も一層、様々な食のテーマについて人々に語りかけ、食について考える機会を提供し続けたいと思っております。

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