9月に、児童館30周年記念子育て講座として食育イベントが実施されました。今回のテーマは、食欲がない時の簡単なレシピや離乳食・幼児食の紹介でした。試食や管理栄養士による個別栄養相談、離乳食や幼児食の進め方の栄養相談、かつお節削りの体験なども実施していました。
食育イベント当日は、あいにくの雨にも関わらず、大勢の親子が参加していました。
1階の体験コーナーでは、かつお節削り器を使ってかつお節を削り、削ったかつお節を使い即席のお味噌汁を提供していました。私も削ってみたのですが、思うように削れず、粉になってしまいました。講師の方にアドバイスをもらい、濡れふきんでかつお節をしめらすと、削りやすくなりました。削っていると、かつお節の良い香りがしてきました。カンナの刀で削るタイプのほかに、鉛筆削りのようなハンドルを回して削るタイプのものもありました。このタイプは力をあまり使わずに楽に削ることができました。お味噌汁は、削りたてのかつお節に味噌、乾燥ワカメ、とろろ昆布、ねぎなどをコップに入れてお湯を注ぐだけというとても簡単なものでした。削りたてのかつお節からだしがよくでていて、まさに自然本来のうまみを感じることができました。私は普段は顆粒だしを使ってしまうのですが、味、風味、香りが全く違い、身体に自然となじんでいく感じがしました。参加者からもとても好評で、ぜひ自宅でも実践したいという声が多かったようです。
2階では、食欲がない時の簡単なレシピや離乳食・幼児食について管理栄養士さんのお話を聞くことができ、その後、お母さんとお子さんに試食を提供し食べてもらいました。食欲がない時の簡単なレシピとして夏野菜ゼリーを、離乳食・幼児食としてはかぼちゃの茶巾とえびごはんの試食を提供するお手伝いをしました。夏野菜ゼリーはトマトやきゅうりの夏野菜を入れゼラチンで固めたもので、味つけはめんつゆだけという、育児に忙しいお母さんでも簡単にできるように工夫されていました。また、離乳食期は味覚が形成される大事な時期なので、かぼちゃの茶巾にはお砂糖を入れずにかぼちゃ本来の甘みを生かして作っていました。えびごはんは、干しえびを加えてごはんを炊き、手軽にカルシウムを補給できるように工夫されていました。食べている様子を見てみると、お母さんだけが食べている場合もありましたが、お母さんに食べさせてもらっている子や自分で食べられる子もいて、成長の段階でさまざまでした。紹介や試食が終わると、個別に管理栄養士さんに相談している方が何人かいらっしゃいました。やはり、離乳期は少食、食べむら、遊び食べなどさまざまな悩みを抱えている方が多いようでした。
私は地域の食育活動が実際にどのように行われているかを知りたいと思い、このイベントにお手伝いとして参加しました。児童館での食育は気軽に参加できるし情報収集の場として利用しやすく、食育に関心を持っている方が多いことがわかりました。イベント後に児童館の職員の方とお話をしましたが、職員の方もとても食育に対して関心をもっているようでした。普段相談を受けて回答に困ることも何度かあったようなのですが、今回の食育イベントを実施し、いろいろと参考になったとおっしゃっていました。お母さんや子供たちにとって一番身近なのは児童館の職員であるため、連携してより良い食育を実践していくことが必要だと思いました。また、自分の栄養士としての知識や経験不足であることを実感しました。個別相談のなかで、野菜を使った離乳食を食べてくれないという相談がありました。お母さんは野菜を細かく刻んで気にならないように工夫されていたようなのですが、それでも食べてくれないのでどうしたらよいのかということでした。栄養士さんは細かく刻むのではなくてちょっと大きめに切ってみたらどうかと切り方の工夫を提案されていました。大きめにきることで表面積を大きくすると、水分がしみてやわらかくなります。マニュアル通りに作ったとしても赤ちゃんが食べてくれない場合があり、現場では自分の持っている知識を対象者に合わせて応用させていく力が求められていることがわかりました。今後また機会があったら、栄養士として自分が成長するためにも積極的に参加したいと思いました。また、今回のイベントでかつお節削り器の体験がありましたが、私自身、“本物の味”を忘れていました。かつお節や昆布からとった味よりも、顆粒のだしの味に慣れてしまっていました。今はかつお節や昆布からとっただしの味を知らない子供たちが大勢います。確かにかつお節を削り、だしをとるのは手間も時間もかかり、便利な顆粒だしを使う方が時間を有効に使えるかもしれません。しかし、今まで受け継がれてきた日本の食文化をこのままなくしてはいけないと思います。今回のような食育イベントは、自然の味、本物の味、日本の伝統の味を大人にも子供にも伝えるよい機会になると思いました。
私は今まで栄養士として多くの人々の健康に貢献していきたいと思っていました。健康はもちろんですがライフステージや日本の食文化など、食育はさまざまな観点がありとても幅広いものです。私は食育を通して何を一番伝えたいのか、もう一度考えていきたいと思います。