野菜の日記念講座「もっと野菜を、もっとトマトを」に参加して

東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 早川 美知、三上 友里江


アドバイザー:東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 保健栄養学研究室 日田 安寿美


私たちは「良い食材を伝える会」主催の「食材の寺子屋」に参加してきました。良い食材を伝える会では食材のことだけではなく、農業や食環境も含めた勉強会を月2回のペースで開催し、そのテーマにあった講師の方をお招きしています。

8月31日はヤサイの日、さらに夏は夏バテ予防のためにも野菜を食べよう、そして今話題となっているトマトを食べようということで、今回は「もっと野菜を、もっとトマトを」がテーマでした。まずはじめに、「全国トマト工業会」の紹介がありました。「『加工品のトマトはとても赤く着色料を使っているのではないか』、とよく言われますが、品種も栽培法も違うから赤いのです。加工用のトマトは地べたを這う様に育つんですよ。」というお話が興味深かったです。

次に枝元さんが登場されました。はじめに台湾のお祭りに参加したお話をしてくれました。そこでは昔ながらの調理法で作ったものを食べていたそうで、「祖先と同じ調理法、味で食べられることは豊かなこと」とおっしゃっていました。昔からその方法が伝えられてきたために分かることで、「代々伝えていくことは大切」ともおっしゃっていました。他には食材の値段の付け方についての考えもお話されていました。「食材を買うときは作ってくれている人にお金を払う気持ちをもってほしいと思う。消費者は安い方がいいと思うが、売値が安過ぎると農家の方は収入が少なく、作物を作り続けることができなくなる。それなりの値段は払わなくてはいけないと思う。」とおっしゃっていました。

授業の様子1。

枝元さんのトークに皆さん興味津々。


いよいいよ、調理の実演が始まりました。まずトマトの保存法についての説明がありました。熟したトマトはチャック付きの袋に入れて、手で押しつぶし平らにならして冷凍保存すると便利だそうです。フローズントマト、キーマカレー、フライドポテト、ジャガイモの炒め物、そして春巻きの皮を使ったピザをお話ししながら作っていました。そしてみんなが待ちに待った試食タイムです。カレーとフライドポテト、食後のデザート代わりにトマトフローズンが出てきました。楽しく、おいしく頂きました。

授業の様子2。 授業の様子3。

野菜たっぷりのキーマカレーとフローズントマト。モリモリ食べられるので夏バテ予防にぴったりです。


参加者の年齢層は50歳以上がほとんどのように感じました。男女比は3:7くらいでし た。この講義を催している会の会員の方や、新聞などを見て応募した方の参加だったので、 皆さんメモを取る、写真を撮るなど、積極的に参加なさっていました。

授業の様子4。

会場の様子。


今回の講義は調理実演や試食などがあり、とても楽しかったです。しかし楽しいだけではなく、色々なお話を聞くなかで考えさせられることもたくさんありました。食育とは「生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること」とされてます。食べることの大切さや食べ方を指導することも大切ですが、もう一歩踏み込んだ作物を育てるところから、手元に届くまでのことを伝えることも大切だと思います。枝元さんの話からもそのような考え方が大切だと思いました。子どもに対しての食育であれば"農家の方が一生懸命作ったものや私達のために犠牲となった命を無駄にしないように感謝の気持ちを持って食事をしましょう"でいいと思います。しかし、今回のような大人を対象としている場合、農家の方の生活、手元に届くまでに関わる多くの方々いることなどを伝えていかなければいけないと思いました。今回はそういったお話も含まれていて、とても分かりやすく伝わってきました。また、野菜をたくさん摂取できるような工夫が分かったり、調理デモや試食もあって楽しめる、とても有意義な講義でした。

授業の様子5。

トマトの加工品のいろいろ。


枝元さんは台湾での経験から「料理や文化も若い世代に伝承していくこと、祖先が作ってきたものを思い出すことは豊かなことなのではないか」という考えを話して下さいました。今の日本は豊食の時代。食べ物があることが当たり前な時代になり、食べ物があることの有難さが見えなくなってきてしまっているのではないのでしょうか。豊かさを考え直す、そんな食育があってもいいのかもしれません。





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