私は、入試センターのアルバイトを時々やらせていただいています。栄養科学科(私が所属している学科)の受験を考えている高校生に、大学の施設や栄養科学科の研究室等を案内するアルバイトです。
つい先日、このアルバイトをしているときのことです。その日は、高校3年生の女子生徒1名を案内していました。学内案内もほとんど終わりにさしかかったとき、彼女から「この前、学校で旬のことを教わってすごいな!と思ったんです。それで、農大に入ったらいろいろ勉強できると思って、見学に来ました。」と、にこにこしながら言われました。私は、高校で『旬』について教わって感激する彼女に感動しました。それと同時に、私と『旬』との出会いを思い出しました。
初夏の頃、スーパーの目立つところに並んでいるのが・・・そら豆。今年,皆さんの中にも味わった方がいらっしゃるかもしれませんね。
私にとって、そら豆はやさしい思い出をよみがえらせてくれる梅雨時の恒例食材です。そら豆の香りをかぐと、心がホッとあたたかくなり、脳が活性化されたような気分になります。それは、子供の頃のある日を思い出すからです。
夏が近づいて蒸し暑さを感じる頃になると、近所の方からそら豆をいただくことがありました。そら豆のさやをむくのはちょっとかたいので、父がいる休日の夕方が来るのを待っていました。弟と私も真似をしながら、小さな手で一生懸命にさやをむいたものです。父が勢いよく一気にきれいにさやからポロポロッとそら豆を出すのをみて、「すごい!」と、思ったことを覚えています。
その後、そら豆ご飯を炊くのは母の担当。さやむきというひと仕事?!を終えた私たちが外で遊んでいると、台所の方からぷ~んとそら豆ご飯の炊けた香りがしてきました。そら豆の香りは独特で、子供の頃の私にとってはやや苦手なにおいでした。ですから、食べる時も、実は少し複雑な気持ちで食べていました。
しかし、両親が「そら豆かぁ~。もうすぐ、夏だね。おいしいね。」と、嬉しそうに食べているのを見ると、私はとても気分がよくなりました。そうすると、そら豆ご飯が特別おいしいもののように感じてきて、「これは、おいしい。これは、おいしい。」と、心の中でつぶやいていたものです。その呪文が、私をそら豆嫌いな子にしないでくれたような気がします。
『食育』というと、とても難しく感じてしまったり、特別なことをしなければならないと身構えてしまったりするかもしれません。しかし、もっと簡単に考えてみることはできないでしょうか?
料理を作っているときの親の表情や食事をするときの親との会話が、子供にとって心地よいものであると、自然に『食べ物』や『食べること』に興味をもつようになります。そのことが、食育にとって非常に大切だと思います。いったん『食』に興味を持ちさえすれば、『食』に関する知識を得る機会があちこちに転がっていることに気づき、知識を吸収できます。その結果、『食』を選択する力が身につき、気づいたら健全な食生活を実践できる人間になっている!といった具合になると思います。
「そう簡単にいくかしら?」と、思われるかも知れませんが、食育の小さな一歩として、まずは、あなたが、だれかと、笑顔で食事をしてみることから始めてみてはいかがでしょうか?
それでは、最後に、野菜と魚介類の旬をいくつかご紹介します。みなさんは、それぞれの言葉から、どのような情景を思い浮かべますか?
今は、1年を通して様々な野菜や魚介類を購入することができますが、中には、季節を過ぎると手に入りにくいものもありますね。また、旬のものはおいしい、栄養価が高い、経済的に安価であるといった利点があげられます。旬のものを是非楽しんでください。きっと食卓を豊かにしてくれると思いますよ。
春ふき、うど、菜の花、春キャベツ、グリンピース、さやえんどう、たけのこ わかめ、ひじき、さより、など。 |
夏オクラ、枝豆、かぼちゃ、きゅうり、とうがん、ゴーヤ、ピーマン、トマト、とうもろこし うなぎ、かわはぎ、きす、しじみ、など。 |
秋にんじん、たまねぎ、さつまいも、まつたけ、しめじ、まいたけ さけ、さば、さんま、など。 |
冬だいこん、ねぎ、ほうれん草、はくさい、ゆり根 かに、きんき、きんめだい、さわら、たら、はまち、ぶり、など。 |