4年間の勉強の末、今思うこと

東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科  乳井  恵美


アドバイザー:東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 保健栄養学研究室 日田 安寿美


子どもは未知なる力を秘めており、生活環境や、周りの人の関わり方により、育ち方が大きく変化すると思います。私は、その未知なる可能性をどう伸ばしていくか、ということに大変興味があります。大学では栄養学を通して子どもを見てきましたが、子どもにとって大切なことはもちろん「食」だけではありません。しかし、生きるために欠かすことのできない「食」は、幼い子どもの心に与える影響が大きいと考えています。「食」というツールを通して、子どもたちに、生命の尊さや感謝の気持ち、マナーや仲間と食べる楽しさを感じ、学んでもらいたいと思っています。五感を使った多くの体験から、多くの感動を得た子どもは、好奇心が旺盛で感性の豊かな子どもに育つと考えているからです。


私の考える食育とは、「正しい食生活を教える」というものだけでなく、「食に興味を持ってもらう」ことです。世の中にはたくさんの食の情報があふれています。1日3食がよいという人もいれば、2食がよいという人もいます。牛乳を勧める人もいれば、牛乳は毒であるという人もいます。どれが正しくてどれが間違っているのか、今の私では正直、絶対と言える判断ができません。その人が、基礎的な食の知識を持ち、多くの情報を集めたうえで判断した食生活ならば、心理的な面からもそれが最善なのだと考えています。問題は、「健康を意識した食生活を送っているか」であると思います。子どもたちには様々な活動を通して、「食」に興味を持ち、自分の食生活を自分で見つめる力を持てるようになってほしいと考えています。


食育説明会の画像また、子どもへのアプローチと同時に保護者にも食育を行う事は、大人にとっても、食生活を見直し、変化させる大きなチャンスであると考えています。一度確立されてしまった食生活を変えるには、相当な意思と努力が必要となります。いくら理想的な食生活を語ったとしても、それを理解することと、実行することには大きな隔たりがあります。そのため、病気が発覚するなど、大きな出来事がなければ食生活は変わりにくいのだと思います。その中で、妊娠や出産は自分の体以上に子どものことを思い行動する時期ではないでしょうか。例えば妊婦さんなら「これから生まれてくる子どものために」、そしてその後は「今いる子どものために」という思いが食生活の改善を後押しすると考えられます。


食育説明会2の画像私達は卒業論文では、子育て世代の食育手法として、幼稚園で親子に対する食育を行いました。忙しい子育て世代を集める場として幼稚園はとても有効であり、「子どものために」という動機づけの元に食育を行う事で効果をみることができました。それでも、その幼稚園に通っている人、さらに時間に余裕のある人のみの参加であるように感じました。しかし栄養士は幼稚園のみでなく、様々な場所で妊産婦と関わりを持っています。妊産婦と交流の持てる保健センターなど行政や地域で活躍している栄養士や、全国的に情報発信できる企業の栄養士(ベビーフードなど)、母親の一番の心のよりどころとなり得る母子栄養担当の栄養士などです。そして、立場は違っても各栄養士にはそれぞれの強みがあると思います。すべての家庭へ同じように情報を提供するには、これらの様々な場で活躍する栄養士が情報を交換し合い、連携していくと良いのでは、と考えました。私は、これから管理栄養士として働くにあたって、今まで共に学んできた大学の仲間を筆頭に、大学の垣根を越えた仲間との連携を大切にしていきたいと思っています。