栄養教諭実習から学んだ食育

東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科  内田 成美


アドバイザー:東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 保健栄養学研究室 日田 安寿美


私は東京都内の小学校に栄養教諭実習に行きました。実習初日は全学年の給食風景を見学しました。学年ごと、学級ごとに子供たちの雰囲気は違っていましたが、どの学年、学級にも共通して印象に残ったことは、楽しそうに給食を食べている児童の顔でした。栄養教諭の先生の姿が見えると、空いたお皿を誇らしげに見せていました。
実習担当の学級でもそれは同様であり、児童のお皿はみるみるうちにきれいになっていきました。おかわりをする児童も多く、そこで驚いた事はお肉やお魚、ごはんのおかわりはもちろん、野菜をおかわりする児童が多く見られたことです。
私が敢えて「お肉とかじゃなくていいの?」と質問すると、「野菜、美味しいじゃん!」と笑顔で答える児童に、またも驚かされました。

子どもたちと一緒に給食を食べている様子。

子どもたちと一緒に給食を食べている様子。みんな給食が大好き!笑顔があふれています。


食べている姿はもちろん、給食までの時間を気にする児童や今日の献立をチェックしに来る児童の姿を見て、給食の時間が児童にとってとても楽しい時間であり待ち遠しい時間であることを感じ、食育活動の重要性を改めて実感することができました。
私の実習先である台東区立の小学校には栄養教諭の先生がいらっしゃいました。先生が栄養教諭になったのは数年前のことですが、それ以前からもこの小学校で学校栄養職員として食育活動を積極的に行っていたそうです。
河部先生の食育の授業は様々な単元の授業に盛り込まれています。学級担任とティームティーチングをしていますが、授業が始まる前に河部先生の姿が見えると児童は大喜びです。「河部先生=食べ物の授業」だとわかっているからです。
1年生から実施されていましたが、1年生には食育の授業は難しいのではないかと思っていました。しかし、食に興味を持たせるという意味で問題はまったく感じられず、3色の食材を呪文のように唱えると1、2回復唱させただけで、児童はなにも見ずに言えるようになってしまいました。3色の機能まで深い知識は身につけさせていませんでしたが、児童の感想や考えを聞くと1年生ながらもしっかりとした考えを持っており、食に触れることの重要性を感じました。また、1年生のうちに少し食に触れておくことで、2年生以降の食育の授業の導入もスムーズであることを実感しました。
先生の授業は資料も多く、児童の視線は釘付けになっていました。食材カードなどを手に持たせ、児童に黒板に貼らせるなど児童に作業をさせることでより興味、関心を持たせるよう工夫されていました。


私はこのような先生の授業をヒントに3年生に研究授業を行いました。食に関心の高い実習校ではマイナスをプラスにするような授業ではなく、プラスをプラスにするような授業を求められました。テーマについての指定はなかったので、大学での卒論研究内容から大豆について「大豆はなせになろう!」をテーマに授業を行いました。
導入では、卒論研究で発芽試験を行った写真を見せました。クイズ形式をとり、数時間で発芽する写真を見せると子どもたちも興味を持った様子でした。発展部分では、大豆がどのような食品に加工されて使われているかということを理解してもらうことを目的に、実際の給食献立の中から大豆製品が含まれている料理を選んで媒体を作り、その中から大豆製品を見つけるというグループワークを行いました。グループワークをやりやすくするために、媒体には料理名、材料名をあらかじめ示しておきました。6つの班に別々の献立を用意し、発見した大豆製品を発表する形式にしました。発表の順番がまわっているという事もあり、班の子と協力し一生懸命大豆製品を探す児童の姿が印象深く残っています。

グループワークの様子。

グループワークの様子。子どもたちの目は真剣そのものでした。大豆製品は見つけられたかな?


発表後は献立に出てこなかった大豆製品を紹介しました。ヒントを出すことで答えられる児童も多かったことから、一方的な授業にならないよう工夫しながら授業を進めました。
また、先生の授業から学んだ、実際に実物を示すということを試みました。油揚げと厚揚げを比べてみたり、おからは実物と調理したものを見せました。おからについては調理したものを見せると「これなら見たことある!これがおからなんだ!」と言う児童がいました。
発展部分の後半では大豆のはたらきについて、児童の意見を求めながら授業を進め、まとめました。また、大豆は枝豆を枝豆として収穫せず、さらに成長させ、乾燥させてできているということを実際に枝豆の苗を見せて、次の授業につながるようにまとめをして終わりました。

まとめの様子。

まとめの様子。枝豆が大豆になることに驚く児童も多くいました。子どもたちは終始真剣に聞いてくれました。


研究授業を通して、媒体の重要性を改めて感じました。実際に見せ、触らせることによって児童の興味、関心が一段と高くなることを児童の真剣な目を見て感じることができました。
また、先生は給食に関しても安全で美味しい給食を前提とし、たべやすい給食、残さない給食ということが常に考えられており、食材へのこだわりはもちろん、児童が食べやすい工夫なども多くなされていました。午前のみの授業の日には、パンなどではなくカレーライスなどにして児童が食べやすい献立にしたり、スティックサラダの野菜を短めに切ることで3種の野菜が均等に盛り付けられるように、また盛り付けやすいようにといった工夫も学ばせていただきました。
児童に対する食への工夫は様々なことにまた細かくされていました。その工夫は児童の様子をよく見ることでできることだと先生はおしゃっていました。先生は給食の時間になると毎日、すべての学年学級を回り配膳の様子、食事をしている様子を見に行き、アレルギーを持つ児童や小食など気になる児童には声をかけて児童の表情を見ていました。また、養護の先生や学級担任とのコンタクトもかかさないことで、様々な工夫が行えるのだと学びました。また、そのような先生の姿勢に対して学級担任はもちろんすべての先生方がバックアップしているとも感じられ、学校全体が食への関心を高く持っているとも感じました。

私は今回の実習に行くまでの栄養教諭についての考え方として、食育の授業により児童たちの食への関心を高めることこそが重要だと思っていました。しかし、それももちろん重要なことなのですが、授業よりも優先すべきは毎日の給食にあることを改めて実感しました。日々の児童の様子をよく見ることにより様々な工夫がうまれ、児童がより楽しく食べやすい給食作りを行うことができることを実感しました。その上で、食に関する授業などをすることで相乗効果的により広く深い関心を持たせることができ、その連携の重要性を強く感じました。
今回の実習で、学級担任やすべての先生との連携が重要だということも実感しました。小学校の先生は児童の様子を見るプロであり、先生方の協力をもとに学校全体で取り組むことで食育の効果がさらに発揮されるのだと感じました。
5日間という短い期間の実習でしたが、様々なことを勉強させて頂きました。実習最終日、校長先生が「栄養教諭は、未来のある子供たちに食について学ばせ、成長させるという本当に素晴らしい職業だと思う」とおっしゃっていました。私はそのとき、実習初日にみた空になったお皿を誇らしげに見せる児童の顔を思い出しました。食について正しい知識や興味関心を持たせることによって、あるいは食べやすい工夫や環境作りをすることによって、児童をより健康に成長させることができることを実感しました。今回の感動を、是非今後にいかしていきたいと思います。