栄養士の卵たち ~MUSASHINO LIFE~

食べて、治療をサポート

武蔵野栄養専門学校では栄養士が活躍する職場に合わせ、2年次に必修選択科目となっている4つの選択コースがあります。
本コラムNo.8みんなでシェア!でご紹介した事業所給食や産業給食を想定したクックトレーニング実習に続き、今回は「病院・福祉栄養実習」の授業からお届けします。
病院・福祉栄養実習の授業では、病院における食事療法や栄養管理、福祉施設における高齢者や障がいのある方への献立作成など医療・福祉分野で健康をサポートし、より高度なニーズに対応できる栄養士を目指します。

病院での食事は、一般治療食と特別治療食に分けられます。
一般治療食とは、エネルギーや栄養成分の制限が必要ない患者様に提供される食事です。栄養状態を良好に保ち、治療に必要な治癒力の向上を目的としています。
特別治療食とは、病気に合わせたエネルギーや栄養成分のコントロールが必要な患者様に提供される食事です。制限を設けることで、直接的な治療効果を高めることを目的とします。
今回は特別治療食といわれる食事分類のうち、脂質コントロール食として脂質異常症と胆石症の食事について実習を行いました。

治療食として脂質の量と質に着目し、学びました。

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  • 1-1
  • ①講義
    はじめに先生の講義を聴いて、病気の特徴や診断基準、食事療法・献立作成とあわせた調理方法のポイントを確認します。

    脂質異常症:血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。
    血液中の脂質を適切な値にするため、適切なエネルギー量を摂取する・コレステロールを控える・脂質については体内のコレステロールを増やしやすくする飽和脂肪酸を多く含む食品を控え、反対に体内のコレステロールを下げる働きがある不飽和脂肪酸を多く含む食品を摂るようにします。

    胆石症:胆石(胆嚢や胆管にできる結石)によって引き起こされる病気の総称を胆石症といいます。
    胆石生成を促進させないこと、胆石発作を予防するため、動物性脂肪の多い食品を避けるようにします。また乳製品の摂りすぎにも注意します。
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  • 2-1
  • ②打ち合わせ
    スムーズに作業を進めるため、班のメンバーで話し合いをし、治療食として適切な切り方や加熱の方法を検討します。
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  • 3-1
  • 3-2
  • ③調理・盛り付け
    打ち合わせの内容をもとに、衛生的に安全な方法で調理、また食欲が進むような盛り付けをします。
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  • 4-1
  • ④料理の提出・発表・講評
    各班ごとに出来上がった料理をトレーにのせ、全ての班の料理が見渡せるように提出をします。
    それぞれ打ち合わせた内容と、実際に調理をする際に気をつけたことや進めていく中で修正をした点などを発表します。
    発表後は、先生からの講評をいただきます。

脂質異常症と胆石症の食事が完成!

栄養成分

まさば 一切れ80g

エネルギー
198kcal
たんぱく質
16.5g
脂質
13.4g
炭水化物
0.2g
食塩相当量
0.2g

しろさけ 一切れ80g

エネルギー
106kcal
たんぱく質
17.8g
脂質
3.3g
炭水化物
0.1g
食塩相当量
0.2g
  • 完成品1
    • 夕食の献立例:脂質異常症
    • ごはん
    • さばのソテー サルサソース
    • ほうれんそうとパプリカのバター炒め
    • カリフラワーのマリネ
    • 果物(オレンジ)
  • 完成品2
    • 夕食の献立例:胆石症
    • ごはん
    • さけのソテー サルサソース
    • ほうれんそうとパプリカのバター炒め
    • カリフラワーのマリネ
    • 果物(オレンジ)

今回の献立は、主菜の魚の種類以外はどちらも同じ食材を使用した料理です。
さばとさけ、同じ重量を使用した場合、さばは脂質が多いためエネルギーが高めになり、対してさけは脂質が少ないためエネルギーが低めになるという特徴があります。

「脂質異常症」の食事では、さばを使いました。こちらのポイントは「脂肪の質に注意する」ということです。
さばは、DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸を多く含み、代謝を助けるビタミンB群も豊富で、生活習慣病予防に効果的です。また、血液の流れを良くするとともに、血栓や動脈硬化を予防します。

「胆石症」の食事では、さけを使用しました。こちらのポイントは「脂肪の量に注意する」ということです。
さけは、さばと同様にDHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸を多く含み、血栓や動脈硬化を予防します。さけの身に見られる赤い色素成分のアスタキサンチン(カロテノイドの一種)は、強い抗酸化作用を持つことで知られており、体内の活性酸素を除去し、細胞の酸化を防ぐ働きがあります。

食事療法で気をつけるべき点はいろいろありますが、「脂肪の質に注意する」際は、食材の栄養成分を確認して選ぶこと、「脂肪の摂取量を抑える」際には、調理に使う油を減らしたり、脂肪の少ない食材や部位を使ったりするなどの工夫をすることになります。

病院の食事内容は、患者様の病態にあわせて医師の指示のもとに提供されます。
食事も治療の一環として、患者様一人ひとりに合わせた食事の提供のために必要なことを考え、学習していきます。

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ぜひご覧ください!!

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